長距離おさんぽ部

長い散歩が好きです

遠野雪道歩き(遠野旅行①)

私が最初に岩手に足を踏み入れたのは2015年のことでした。当時遠野物語にはまっており、いつか遠野に行きたいと思って特に計画性もなく思い立って2泊3日の旅に出ました。計画性の無さのせいかおかげか楽しい3日を過ごし、それ以来隙を見て何度も遠野に訪れています。

今回は知らない土地をひたすら歩いて旅した思い出です。

f:id:ochinaihappa:20230313201136j:image

今や見慣れた新花巻駅。当時は西日本から関東に出てきて仕事をしており、雪は見慣れておらず見慣れない光景にワクワクしていました。京都に住んでいるときは一年に一回ほど大雪が降り、雪を見に大原三千院までわざわざ遊びに行っていました。
f:id:ochinaihappa:20230313201142j:image

遠野駅でお出迎えする河童たち。遠野物語の町なんだ!と感激しました。河童はマフラーを巻いてもらって暖かそうです。駅前は大雪。本当に無計画で駅前で自転車を借りられるらしいという情報だけ得ていたのですが、雪のため自転車の貸し出しは中止していました。いきなり交通手段が奪われます。最初は歩くつもりはなかったんです。

f:id:ochinaihappa:20230313201139j:image

遠野の交番。こんなところも河童です。ウィンクしていてかわいい。お巡りさんが雪かきをしています。そんな光景も普段見ることがありません。

ホテルに荷物を預け早速遠野近辺の観光スタートです。

f:id:ochinaihappa:20230313201145j:image

本来は自転車でここまで来ようと思っていたのですが仕方なく電車を使ってきました。今から考えるとよく釜石線の丁度いい時間があったな...と。下手したら2時間以上待つことになります。

実はここの駅名は私の苗字で珍しいので関わりがありそうなものを探しに来ました。
f:id:ochinaihappa:20230313201148j:image

青空に雪の白さがまぶしい中、GoogleMapの案内に従って目的地まで歩きます。畑の中に柱のようなものが立っていて、不思議に思って写真を撮っていたのですが、ホップ畑の支柱ですね。

この頃のGoogleMapの経路検索はひどいもので、車だろうが徒歩だろうが道っぽいものは全て最短経路で案内してきます。

f:id:ochinaihappa:20230313201151j:image

本当に何かわからないモニュメント。
f:id:ochinaihappa:20230313201153j:image

消防の高見櫓。
f:id:ochinaihappa:20230313201156j:image

岩手に来て、そして最近東北を歩いて思ったのは石碑があちらこちらに立っていることです。お墓なのか庚申塔なのかわかりませんが道端にあると目を引きます。
f:id:ochinaihappa:20230313201159j:image

ここもひまわりのように同じ方向を見ていて気になる。
f:id:ochinaihappa:20230313201202j:image

多分ここは農道で人が歩く道ではないような...。ちなみに雪を完全に舐めていたので非防水のスニーカーで歩いています。足が冷たいです。この年最初に積もった雪だったのでまだ根雪にはならず昼の日差しで少し溶け始めています。
f:id:ochinaihappa:20230313201205j:image

地図で探していってみたかった平倉稲荷。木に囲まれた参道に雰囲気があります。
f:id:ochinaihappa:20230313201208j:image

!!!??
f:id:ochinaihappa:20230313201211j:image

数個しかないこの神社について書かれた個人のWebページではつぶれていなかったのですが(少し傾いていた)、まさかの完全に崩落。びっくりしました。諸行無常を感じます。

ご神体の移動とかはどうされているんでしょうか。近隣にも稲荷神社がたくさんあるのでもしかすると移動してしまったのかもしれません。

雪のある場所で育ってこなかったので今まで気づかなかったのですが、人の手が入らなくなった木造の建物は積雪地帯ではすぐにつぶれてしまいます。

なんだかさみしくなってしまったのでまだ祠のしっかりある左奥の山神様に手を合わせてきました。そしてここから私の気象にまつわる厄介でありがたい伝説が始まったといっても過言ではありません。

仕事が嫌だけれど計画通りいかないと大変なので表向きには晴れていてほしいと思ったら、普段ほとんど台風が来ない地域に複数台風を当て開始を延期させ、長期出張先で少し疲れてきたなぁ、でもせっかく来たから役には立たないと、と思ったら、ほぼ雪なんて積もらない鹿児島に数年ぶりの大雪を積もらせ交通機関を麻痺させて仕事にならなくなったり、神様というのは建前なんか見てくれないものだなぁと思っています。

まぁ半分祟りかもしれませんが面白いので放っておいていますし、急に来なくなったら心配かなと思って遠野に行くたびにここには訪れています。廃神社に行くのは本当は良くないらしいですが、あまりスピリチュアルなことはわからないし、嫌な感じもしないのでいいかなぁと。

f:id:ochinaihappa:20230313201214j:image

岩手上郷駅付近の平倉観音。こちらは出入り口に鹿ネット?のようなものもありしっかり手入れされています。
f:id:ochinaihappa:20230313201217j:image

日当たりが良いので雪はもう残っていません。
f:id:ochinaihappa:20230313201220j:image

社の細工がかわいらしくこだわりを感じます。
f:id:ochinaihappa:20230313201133j:image

頭がとげとげの狛犬。すこし小さくてかわいいですが顔つきに意思の強さを感じます。
f:id:ochinaihappa:20230313201223j:image

岩手上郷に到着しました。周りにコンビニ等もなく時間をつぶすところもないので駅舎の中で電車を待ちます。駅の待合室に関しては九州は無人駅だとベンチがあればいい方なので、寒いとはいえ東北は、ほとんどの駅に室内待合室があるところが気に入っています。
f:id:ochinaihappa:20230313201226j:image

遠野の町に戻ってきました。猫があちこちにいますが寒くないのかな。
f:id:ochinaihappa:20230313201231j:image

どぶろく飲み比べ。遠野はどぶろく特区なので民宿などでもどぶろくを仕込むことができます。

f:id:ochinaihappa:20230313201228j:image

あえりあ遠野に宿泊。夜は語り部さんのお話を聞くことができ、大きなお風呂もついています。遠野の弱点は温泉がないところです。人工温泉はありますが。

f:id:ochinaihappa:20230313201234j:image

次の日は遠野をめぐりたかったのですが自転車という手段を封じられたため思案。レンタカーを借りても良いのですが、この頃の私は全く雪道を運転したことがなく命の危険を感じたため却下。結局タクシーを使います。

遠野はタクシーでの観光案内も充実していますが、一人でうろちょろしたかったため片道で一番端の目的地まで運んでもらい、歩きながら戻ってくることにしました。寄り道なしでおおよそ10kmの道のり。

たどり着いた先はデンデラ野。姥捨ての話が語り継がれる場所です。タクシーから降りるとかなり運転手に心配され電話番号を渡されました。確かにこんな雪の中に一人。あたりには動物の足跡しかありません。

デンデラ野には田畑が広がり、姥捨てとはいっても捨てられたわけではなく、60歳を迎えると集落から離れて自給自足して暮らす習慣があったとされています.
f:id:ochinaihappa:20230313201237j:image

レプリカですが、当時の人々が暮らしていたとされるあがりの家。
なんだか雪が積もって遠いな...。
f:id:ochinaihappa:20230313201242j:image

雪をかき分けたどり着きます。中にも入れます。
f:id:ochinaihappa:20230313201245j:image

中は囲炉裏を囲んで生活できるようになっています。どうやって寝るのだろう...。外と比べると中は風がなく暖かいですがやはりここで暮らすのは凍えることでしょう。
f:id:ochinaihappa:20230313201248j:image

雪のデンデラ野を後にしてたかむろ水光園の横を通り次の場所へ向かいます。この辺りは道路も雪が解けていません。
f:id:ochinaihappa:20230313201251j:image

とおのカッパでた~らーめん。
f:id:ochinaihappa:20230313201253j:image

なんの「!」だろうと思いましたがめちゃくちゃ滑りました。あと農道から車がでてくるかもしれないのかな?「!」のマークたまーに見ますがなぜあるのかわからないものもあります。
f:id:ochinaihappa:20230313201256j:image

通りすがりの神社。町のあちらこちらに神社があります。
f:id:ochinaihappa:20230313201259j:image

かっぱ。カッパ淵を目指します。
f:id:ochinaihappa:20230313201302j:image

釣りをする人が...。正面から見るとびっくりしました。マネキンです。
f:id:ochinaihappa:20230313201305j:image

猿??
f:id:ochinaihappa:20230313201311j:image

なんだかパラダイスみのある集会。
f:id:ochinaihappa:20230313201316j:image

本当に怖い。何???
f:id:ochinaihappa:20230313201319j:image

本当に何??
f:id:ochinaihappa:20230313201313j:image

ノーコメント。
f:id:ochinaihappa:20230313201323j:image

なんだかよくわからないオブジェの迫力に目的を忘れかけましたがカッパ淵はもうすぐです。
f:id:ochinaihappa:20230313201325j:image

ここがカッパ淵。昔はカッパがここでよくいたずらをしていたそう。思っていたより鬱蒼とした場所ではなかったのが意外でした。
f:id:ochinaihappa:20230313201328j:image

名物のカッパおじさんはお留守でした。釣り竿だけしかけられています。餌はキュウリ。
f:id:ochinaihappa:20230313201331j:image

だれでも釣れるように釣り竿が置いてあります。
f:id:ochinaihappa:20230313201334j:image

注意書き。美男美女は注意です。
f:id:ochinaihappa:20230313201337j:image

お供えが可愛くて全景を撮り忘れました。淵にあるカッパを祀った神社。お乳の出が良くなるそうです。

カッパには会えませんでしたが、カッパに会いたい人たちの名残を感じ次の場所へ。
f:id:ochinaihappa:20230313201340j:image

遠野伝承園に来ました。遠野の昔の農家の生活様式を再現しており、伝承行事や遠野物語について知ることができます。
f:id:ochinaihappa:20230313201343j:image

丁度干し柿を作っていました。
f:id:ochinaihappa:20230313201346j:image

おしら堂の見学に行きます。おばあちゃん?
f:id:ochinaihappa:20230313201352j:image

おばあちゃんがエンドレスで語っていました。
f:id:ochinaihappa:20230313201349j:image

私がいなくてもしゃべり続けるおばあちゃん。
f:id:ochinaihappa:20230313201355j:image

ずっと真っ白な中歩いてきましたが急に彩度が高い。ここはおしら堂です。

おしら堂は遠野物語にも残る伝承、オシラサマを祀ったお堂です。オシラサマは馬に恋し夫婦になってしまった娘に激怒した親が馬を殺し、悲しんだ娘と共に天に昇って神様になった姿といわれます。色々と突っ込みどころはありますが、オシラサマは、蚕の神さま、農業の神さま、馬の神さま、そして「お知らせ」の神さまとも言われているそうです。

遠野では馬の頭と娘の頭を持つ二体の木彫りの人形に服を着せ、家に祀ります。伝承園では服に願い事を書いてお祈りをすることができます。私もこの時何かを書いた気がするのですが、何を願ったかすっかり忘れてしまいました。
f:id:ochinaihappa:20230313201358j:image

遠野で特徴的な曲がりやです。一方は馬小屋になっていて馬を非常に大切にしていたことがわかります。
f:id:ochinaihappa:20230313201400j:image

伝承園でお昼ご飯。けいらんが食べてみたくて確かけいらん定食にしたはずです。けいらんは餡を餅粉の皮で包み茹でたデザート。ひっつみも食べました。伝承園は駅から比較的近く、散策、ご飯も楽しめるので遠野に来た時はひとまずここへ行くのがお勧めです。

www.densyoen.jp


f:id:ochinaihappa:20230313201403j:image

ここにもカッパ。交通安全を守るカッパです。いろんなところでカッパが働いています。

f:id:ochinaihappa:20230313201406j:image

カッパ?
f:id:ochinaihappa:20230313201409j:image

似田貝のバス停。バス停というより古民家。中にもちゃんと入れます。遠野物語に似田貝の語源が煮た粥からきているという文章がありますが、当時から湿地が広がっていたようなので、実際はアイヌ語からきているようです。

  1. この間に似田貝という集落がある
  2. 合戦の当時、このあたりは葦が茂って地面が固まらず、ユキユキと動揺した
  3. あるとき八幡太郎・源義家がここを通り、敵味方どちらの兵糧なのか、粥を多く置いてあるのを見て、
  4. これは煮た粥か
  5. と言ったことから、村の名となった

www.koten.netf:id:ochinaihappa:20230313201412j:image

また畑の真ん中を歩いていきます。さすがにスニーカーもびしょびしょで足が気持ち悪いです。
f:id:ochinaihappa:20230313201415j:image

キツネの関所。今は何も残っていませんが、昔ここで女に化けたキツネに騙されたかわいそうな男がいたそうです。
f:id:ochinaihappa:20230313201418j:image

しゃちほこ。
f:id:ochinaihappa:20230313201421j:image

遠野郷八幡宮の参道の一の鳥居です。今回はなぜかスルー。遠野郷八幡宮は大きくて立派な神社です。
f:id:ochinaihappa:20230313201424j:image

さすらい地蔵。このお地蔵さんの由来が面白く、昔力比べが好きな若者がこのお地蔵さんを持ち出しては適当なところに投げ出し、同じく力自慢が運んでは戻ってくるというのを楽しんでいたそう。お地蔵さんもまんざらではなさそうで、たまに信心深い人が台座にしっかり固定してしまうと逆に怒っていたのだとか。

今では固定されてしまっています。f:id:ochinaihappa:20230313201427j:image

宇迦神社。ここもお稲荷さんです。屋根雪が落ちてきそうでハラハラ。

遠野市街地に戻ってきたので、宿の周りにある市立博物館やとおの物語の館に行って、より遠野物語や遠野の風土について詳しくなりました。
f:id:ochinaihappa:20230313201430j:image

夜は遠野名物ジンギスカンをいただきました。初めて一人焼き肉をしましたがとても忙しい。ラム肉が柔らかく臭みもなくいくらでも食べられます。この時ラムにはまって家でもちょくちょくふるさと納税でラム肉を取り寄せてジンギスカンをしています。
f:id:ochinaihappa:20230313201433j:image

靴がびしょびしょぼろぼろになったのでやっとあきらめて遠野のショッピングモール「とぴあ」でスノーブーツを購入。雪国に来ないとなかなか買う機会がありません。最近さすがに捨てましたが、去年まで使っていました。
f:id:ochinaihappa:20230313201435j:image

3日目。遠野駅前のカッパ、ではなく天狗。遠野は色々な妖怪に見守られています。
f:id:ochinaihappa:20230313201438j:image

少し離れているので路線バスに乗って遠野ふるさと村に来ました。

www.tono-furusato.jp

遠野ふるさと村は昔ながらの里山が再現された施設です。園内は広いです。
f:id:ochinaihappa:20230313201441j:image

マヨイガ橋。山の中で見慣れぬ立派な家にたどり着いたら、お茶碗などを持ち帰ると家が繁盛するマヨイガ伝説というものがあります。この橋はそれを模したもので森へと続きます。
f:id:ochinaihappa:20230313201444j:image

マヨイガの森と名付けられた森は小川も流れ里山の雰囲気。雪が溶けて一面緑になれば長閑な風景が広がるでしょう。
f:id:ochinaihappa:20230313201447j:image

園内の池。全部凍った池を始めて見ました。よく見ると氷の下に魚が泳いでいるのが見えます。睡蓮も時期には綺麗に咲くことでしょう。
f:id:ochinaihappa:20230313201449j:image

曲がりやの中にお邪魔します。立派なつららが。
f:id:ochinaihappa:20230313201452j:image

曲がりやではしっかりと火がたかれていました。f:id:ochinaihappa:20230313201457j:image

冬に限らず夏でも毎日やらなければならないそう。家の中の柱や茅葺をいぶすことで防虫や防カビになります。

f:id:ochinaihappa:20230313201130j:image

しらゆき号。真っ白な馬です。曲がりやの中で大切に飼われています。
f:id:ochinaihappa:20230313201455j:image

こちらは先ほど伝承園でも見たオシラサマ。このように床の間に綺麗な服を着せて大切にされています。
f:id:ochinaihappa:20230313201500j:image

気仙大工左官の家でも見ましたがこういう古民家の縁側は外の景色含めて好きです。住めることなら広いお庭と縁側のある平屋に住んでのんびりしたいものです。

縁側の木が短辺方向になっていたのが気になりました。一気に雑巾がけがやりにくいですね。
f:id:ochinaihappa:20230313201503j:image

遠野の雨風祭りで使われる藁人形。雨風鎮めの祈願祭で、台風退散、無病息災、豊作祈願を願って藁人形を作り村内を持ち歩きます。
f:id:ochinaihappa:20230313201506j:image

ご立派ですがそこにお賽銭をさすのはどうかなと思う。

ふるさと村の中にはまぶりっと(守り人)と呼ばれる方たちがいて、農作業や家の管理、農業・工芸体験のインストラクターをやっています。曲がりやのこたつに入って、まぶりっとのおばあちゃんと遠野のことだけでなく普通に人生相談をしました。はじめて練炭のこたつに入ったのですが、電気のこたつよりふんわりと暖かい気がしました。

長話をしてまたバスに乗り帰路につきます。
f:id:ochinaihappa:20230313201508j:image

遠野駅で食べたスペシャル鍋焼きうどん。全部盛りでスペシャルでした。
f:id:ochinaihappa:20230313201511j:image

最後にはなかっぱ。遠野には遠野かっぱ工事隊がいます。

無計画で来て急遽歩きになったり電車に乗ったり、3日間であちこちを回りました。当時はアプリで徒歩トレース等取っていないのでわからないですが、おそらく15km程度は歩いていそうです。車だったらもっと遠くまで足を延ばせたかもしれませんが、遠野の町並みの中、田園地帯の中、雪を踏み分け歩いた記憶は私の中で強く残り、また絶対来ようと思わせる魅力の遠野の旅でした。